ただ悔しくて涙が止まらない! 難病「魚鱗癬」で苦しむ我が子の姿に「理想の成長」が叶わないと気づいた若き母の葛藤
難病を持つ我が子を愛する苦悩と歓び(14)
◆想像の世界にさようなら
夫が帰るまでには、泣いたと物語るこの顔を何とかしなければ。
そう思い、また顔を洗い、まぶたに氷をあてる。
夫は私とは違い、早くから全てを受けとめ、目を反らさず前を向いて進んでいる。
現実を見ている、ように見せるかのように、強がって無理をしている。
それも含めて、すごく強い人だ。
これ以上、夫ばかりに頑張らせてはいけない。
私も強くならなければ。帰宅後は今日の陽の様子や夫の仕事の話など、他愛ない会話をしていた。
夜、布団に入り、横で眠る夫を確認してから、泣いた。
陽がいるはずのベッドスペースが、むなしい。
・・・ダメだ! 泣いてばかりいたら陽が悲しむ。陽の母親は私だけなんだから !! と自分ではわかってる。そう思って頬をペチッと叩いても、悔しくて涙が溢れる。
何に対して悔しい?
ちゃんと産んであげられなかったことが悔しい?
我が子に辛い思いをさせてしまうことが悔しい?
もちろんそれはそう。
でもこの時の私はまだ、陽より自分のことが大事だったのかもしれない。
陽が産まれたら、アレしてコレして、ドコソコに行って、あんなことしたいな〜、こんなことしたいな〜
初めての保育園は、泣いて私から離れなかったら、どうしよう。
でもそれはそれで、なんだか嬉しいね。お友達たくさんできるかな。発表会はちゃんと歌ったり踊ったりできるのかな。運動会、転けずにかけっこゴールできるかな。
保育士さんに陽の様子を聞くのも楽しみ。
きっと誰もが手を焼く、やんちゃボーイになるんだろうなぁ。
なんて勝手に想像して、産まれる前から理想を陽に押し付けて、それが産まれてきた陽の姿をみたら、叶わないかもしれないと思い、それが、悔しくなった?
胸を張って、違うとは言い切れない。
なんて自分勝手な母親だろう。
自分の思い通りにならなかったから、こんなに泣いて、まるで駄々をこねてる子どもと一緒。
そして、そんな考えをしている自分がいることに気付き、自分が怖くなる。
自分を許せなくなる。
もうこんな考え方はやめよう。
そう誓い、この日はまた、泣き疲れて眠った。(『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』より)
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産まれてすぐピエロと呼ばれた息子
ピエロの母
本書で届けるのは「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」という、
50~100万人に1人の難病に立ち向かう、
親と子のありえないような本当の話です。
「少しでも多くの方に、この難病を知っていただきたい」
このような気持ちから母親は、
息子の陽(よう)君が生後6カ月の頃から慣れないブログを始め、
彼が2歳になった今、ブログの内容を一冊にまとめました。
陽君を実際に担当した主治医の証言や、
皮膚科の専門医による「魚鱗癬」についての解説も収録されています。
また出版にあたって、推薦文を乙武洋匡氏など、
障害を持つ方の著名人に執筆してもらいました。
障害の子供を持つ多くのご両親を励ます愛情の詰まった1冊です。
涙を誘う文体が感動を誘います。
ぜひ読んでください。